統合失調症患者の徒然日誌

毒にも薬にもならぬ文字を書き捨てる。

誕生日前日に見たリアルな夢のお話。

気が付くと、暗い夜道を自転車で走っている。
街灯は数十メートルに一本ずつ等間隔で並んでいるが、それでも埼玉県某市の郊外は真っ暗だった

某市の郊外?なんでこんなところにいるんだ?と考えて、ああこれは夢だなと気が付く。

中学の頃に学校をずる休みして自転車で走り回っていた時の夢だ。

自転車を止め、街灯の下に立つ。
明かりの影響で道の先の暗闇はいっそう暗さを増している。
暗闇過ぎて若干怖い。

これからこんな道を進まなければいけないのか。
いやな夢だな、と思いため息をつく。
吐かれた息が白くなる。
ああ、冬なのか、服装もよく見るとダウンジャケットだ。

しばらく待ってみたが、夢から覚める気配はない。

仕方ない、自転車に乗って、暗闇の方へと向かっていく。
自転車のライトだけが希望の光のように灯っている。


夢の場面が切り替わる。

生い茂った森の斜面を降っている。
辺りは霧に包まれ、雨が降っている。
これは高校時代の山岳部の時の夢だ。

四泊五日の縦走登山で、南アルプス甲斐駒ヶ岳を下山していた時の夢だ。
あの時と同じように目印をロストしているらしく、辺りは樹木と山草が生い茂っている。
若干状況が違うことに気が付く、先輩と後輩と顧問がいない。

ここにいるのは僕一人だけだ。

五時間くらい霧の中を歩いていると小さな山小屋が見えた。
辺りは暗くなってきていて、雨も強い、ここで朝までビバークしよう。
山小屋の板の間で横になり、雨の音を聞いていると、疲れがどっと出て眠りに沈んでいった。

また場面が変わる。

今度は短大時代の研究室だった。
目の前にはウン百万するマイクロプレートリーダーという測定機器が鎮座している。
何かの溶液の成分濃度を測定しているようだ。
マイクロプレートリーダーに繋がっているパソコンの画面をのぞき込んで見る。
どうやら溶液のグルタミン酸濃度を測定しているようだ。

研究室を見渡す。
人の気配はなく、どうやら自分しか研究室に残っていないらしい。
これ幸いとばかりにいつもの癖で研究室の非常階段に出る。
やはり灰皿があった。
夢の中でもタバコが吸いたくなるのだから重症だ。
この時期は寝ないで大学に通い詰めて実験していた、おかげで眠い。
灰皿横の椅子に座りこむとどっと疲れが出てしまい、また眠ってしまった。

次に気が付くと駅のホームの端っこの喫煙所に立っていた。
これは最初の会社勤めのころだ。
ちょうど電車に飛び込む決心がついた時だ、確かあの時は向かいのホームに課長辺りの上司が立っていた。
この夢には登場しないらしい。
誰も出てこない夢なんだろうか、そう気が付いた時に目の前すれすれを電車が通過していった。


真っ暗な部屋の中で、間接照明だけが点いている。
この部屋はどこだ?と逡巡。
ああ、ここは最初の一人暮らしの時の部屋だ。
本格的に死ぬかどうかの選択に迫られた時だな、この状況は。
不意に窓の方を見ると、カーテンの隙間から朝日がのぞいていた。
目の前が真っ白になる。


次に気が付いた場所は、病室だった。
目の前にカーテンで仕切られたベッドがある。
カーテンの向こうから苦しそうな呼吸音が聞こえる。

ああ。

母がいる。
これはあの呪いをかけられたときの、あの直前の場面だ。

手足が震えだす。
カーテンを開けるかどうか悩む。
やはり、僕にとどめを刺されるのをあの人は望んでいたのだろうか?

10秒ほど考えて、僕は思いきりカーテンを開けてみた。

ベッドの上には誰も寝ておらず、先ほどまで聞こえていた呼吸音も聞こえず、辺りは静寂に包まれている。

この病室、いや病院自体に誰もいない。

僕に何を見せたいのだ?

病院の外に出て、近所のコンビニの外に設置してあるベンチに座る。
気が付くとベンチ横のテーブルにはコンビニパスタのペペロンチーノが置かれている。

なるほど。
今までの人生で起こった生死の境の一部再現か。


そう判断した僕は、空に向かって叫んだ。
「お前が何者かは知らない。こんなものをまた見せられたところで俺はまた死のうとするつもりもない、お前はそれを期待したのかもしれないがな。」

明け方の空が、だんだん明るくなってくる。

「お前がどこまで絶望を味わったのかはよく知っている。そうやっていつもお前が無数の絶望を感じていた時、俺はそれを上回る数の希望を信じてきた。そうやって俺は生きてきた!」

東の空から朝陽が望んでくる。

「だから俺はなぁ、死ぬまで信じ続けて、生き続けるんだよ!」

そこで目が覚めた、朝6時4分。


さて、今日も生きてゆこう。

終幕。