統合失調感情障害患者の徒然日誌

毒にも薬にもならぬ文字を書き捨てる。

xx歳になれなかったあなたへ、来年32歳の私から。

◇◇様


お久しぶりです、政宗です。


こうやって手紙を書くのも何度目かになりますね。


僕が30歳になる数ヶ月前、あなたは「やだなぁ、私ももう少しでxx歳だよ。それでも政宗さんには追いつけないけれど、もう老けたくないなぁ。」と言っていましたね。


あれから時が経ち、もうじき僕は32歳になる年号に突入しそうです。


あなたの時間は過ぎることなく止まってしまっています。


先日、埼玉県の某所で立ち往生している車椅子の女性を手助けしました。


声をかける直前、髪型と横顔があなたに似ていると思って、声をかけるのを少しためらいました。


勇気を出して声をかけた時、その人の声を聞いて、その人には失礼だけれど、一瞬凍りついてしまいました。


あなたと声もそっくりだったし、正面から見た顔のつくりもそっくりだったのです。


そんな出来事があって、あなたを思い出しました。


だから今、改めてこの手紙をしたためています。


あなたが去ってから、色々考えました。


あなたの言っていた「だから政宗さんは死ぬまでひとりぼっちだよ。」や、遺書の中にあった「私は政宗さんに本気で怒られたかったんです。」とか、そう言った言葉たちです。


あなたは僕に文学の面白さを叩き込んでくれた人です。


だから相応に言葉の重みも理解していて、その上で、ああいった言葉を投げかけてきたのだと、僕は認識しています。


結果的に話すと、僕はいま物理的には一人ぼっちではないです。


だけど、あなたはこういうことを言いたかったのではないと、今はそう思います。


多分、僕の心の持ちようが「死ぬまで一人ぼっちだよ。」と、そう言いたかったのでしょう。


そういった意味では、その予言は当たっています。


大昔にあなたに話したことがありますね。


「変なスイッチが入ると、世の中の全てが茶番に見えてしまうんだよ。」


この言葉を分析して、あなたは「物事を茶番と認識した時点で、あなたは一人ぼっちになってしまうからね。」と、こう言いたかったのでしょう。

 

あなたは知っていると思いますが、あなたの嫌いな作家の太宰治の作品に、「トカトントン」という作品があります。


作品中に出てくるある男が「トカトントン」という音を第二次大戦の終戦時に聞き、それ以来何かに情熱を注ごうとしても「トカトントン」という音が頭の中に聞こえて、やる気を削がれて辞めてしまうという内容です。

 

今の僕はまさにその状態に近い時を、1日に二回は経験します。


多分これは病気ではなく、僕の心の持ちようなのでしょうね。


あなたはそれをとうに見抜いていた。


だからそういう意味で「あなたは死ぬまで一人ぼっちだよ。」と言ったのですね。


流石の観察力です。


それには今でも頭が上がりません。


この問題は僕自身で解きほぐさねばならないことなのでしょう。


だからこれ以上の言及は避けます。


僕に本気で怒ってもらいたかったこと、それは今でも後悔しています。


僕の変な情けが、いや違う、物事を茶番だと思うその気持ちが、あなたを本気で怒らなかった一番の原因であり、僕の最大の失敗であり、後悔です。


きっとそれすらもあなたは見抜いていたのでしょう。


そう言った意味では、僕は人間を舐めていたのかもしれません。


ここまで見抜かれた上で、あなたはあの遺書を残したのでしょう?


あなたの命を張ったその証明を理解するのに、僕はとても長い時間を要してしまった。


本当にごめんなさい。


今なら、今だからこそ、僕は本気であなたに怒ることが出来るのでしょう。


周りから見れば、それは遅かったのかもしれない。


でも違う、あなたは全てを、自分の命の損失さえも、織り込み済みだった。


「どうせ逝くなら、最後に宿題を残してやろう、せめてそれくらいは。」


きっとこれがあなたの、あんたの、最後に遺してくれた遺書より先に続く手紙だと思って、今は納得しておきます。


ありがとう。

 

じゃあ、またね。